
この本は、Youtubeのホリエモンチャンネルで知りました。一時中古で1万円以上の価格がついていたのはフジテレビ問題の影響があるようですが、今は数百円で買えます。
2006年出版なので情報的に古い部分は割愛して(インターネット、携帯電話業界の見通しなど)、テレビの歴史や経緯が参考になったので要約します。
やはりテレビと政治の癒着や昨今のテレビ界の問題には、根っこがありました。
電波には中波、短波、VHF、UHFがある。中波はAMラジオ、短波はアマチュア無線など、VHFはテレビとFMラジオ、そしてUHFはやはりテレビと携帯電話に使われている。
2004年から携帯が普及したせいで、UHFは電波不足となった。
電波の価値はイギリスを例に取ると、電波の免許オークションで通信事業者が100メガヘルツの電波を3兆8000億円相当で落札した(2006年段階)。日本の場合、電波は政府が決めて無償で免許を与える。そのかわり電波利用料が徴収される。
昔は各無線機に周波の割り当てをしていなかった。タイタニック号は無線が通じず、通信不備で1912年に沈没した。そのせいでアメリカの電波法ができた。日本では総務省が周波を割り当てている。そのせいで市場メカニズムが機能せず、非効率的な電波利用がされてきた。
携帯電話の電波利用料は、テレビやラジオ局が払うそれに比べると非常に高い。
電波が最も贅沢に割り当てられているのはテレビ。市場メカニズムが機能しないため、電波は政治的利権となり、放送は政治に使われるメディアとなった。
日本では1925年にラジオ放送開始、戦争で国民の動員に大きな役割を果たした。戦後GHQは電波監理委員会を設置して放送に中立性をもたせようとしたが、同委員会は1952年の日本独立とともに消えた。放送行政は郵政省の管轄となった。
最初のテレビ免許は日本テレビ。読売新聞社長の正力松太郎はテレビ放送開始に非常に熱心だった。
放送周波数は日本独自の方式をとる選択肢があったが、米と同じ周波数(6メガヘルツ)が採用され、米のテレビ番組をそのまま日本で放送することがになった(千葉注:戦後日本のアメリカ崇拝と自虐史観洗脳はここが原点?)
正力に代表されるように、新聞とテレビ局は切っても切れない関係となった。欧米では見られない関係。テレビは日本をソ連や中国に対する「反共の砦」にするための道具として生まれた。
1950年代にはテレビの売り上げ台数が爆発的に増え、テレビ局の免許申請も郵政省に殺到していた。郵政大臣だった田中角栄は独自の采配で、テレビの開局申請を裁いた。
この利権はその後も田中派が受け継いだ。地方の民放局の免許申請者は新聞が多いため、受理するか否かを武器に、新聞の言論統制ができた。新聞とテレビ両方を、同時に言論操作できたのは自民党にとって大きなメリットだった。
やがて、テレビはイデオロギー統制から、60年代以降の高度成長時代になると消費文明のシンボルとなった。東京のキー局は全国に系列局をつくるため、政治家に工作をおこなった。電波は利権となった。
全国にネット局が広がると、関連新聞社はテレビをコントロールするため自社傘下に入れようとした。ここでも田中角栄が辣腕をふるい、新聞社ににらみを利かし自分の悪口を書かせなかった。(その代わり、文藝春秋の立花隆が田中角栄を暴く本を書いた)
1970年代になると新聞経営が頭打ちとなり、新聞社はテレビ局を支配する要求がますます強まった。特に朝日新聞は、資本関係を整理し、1977年に「全国朝日放送=テレ朝」が改めて誕生した。これも田中角栄が資本変更を調整した。自民党はテレビに加えて新聞社もさらに支配するようになった。欧米では見られない、テレビに新聞の編集委員が出てきてコメントするという、「マスメディア集中排除原則」(客観性を保つための原則)に反する形ができあがった。
地方の民放テレビ局は政治家に作られたと言ってもよく、政治家も「お国入り」を報道してもらえるので重要視する。地方民放の経営の実権は政治家が握っている例も多い。政治家の子弟はコネがあるので、テレビ局に就職できる。
2006年時点では、テレビ局の倒産・合併・買収が事実上一件もない。例外は詐欺で倒産した近畿放送だけ。日本の銀行行政がかつて「護送船団」といって批判されたが、放送業界もそうである(市場経済原理が働かない)。
地方局は赤字経営が多いため、キー局の補填がないと生き残りが難しい。これを解決するため、地方局を合併・集約する試みはあったが、政治家が阻んできた。地方民放の経営者は、経営が分かってない人が多い。こうした弱小局が日本民間放送連盟の大部分を占めているため、業界の合理化が進まない。
(NHKについては、章が長いので以下のポイント部分だけ抜き出します)
NHK受信料制度は戦後、GHQによって英のBBCをまねて導入された。本来、制度の究極の目的は受信料を国民からもらい、放送を政府から独立させることだった。
しかし現実にはNHKの予算は国会で承認されるので、経営陣は政治家の圧力に弱い。 日常的にも番組の細かいことまで総務省が口を出す。海老沢会長は「国会対策窓口」で、番組にも強い影響を及ぼす。
だからNHKの問題の本質は経営陣が退陣しても何も変わらないし、民放もそれは同じ。電波利権を守ることが最大の経営目標になっている。放送業界はジャーナリズムとはかけ離れた、むしろ土建業界のような「官公需」に依存した業界と体質的に似ている。
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以上です。
利権のしくみを変えるしか解決法はないのかもしれません。
どの業界もアンタッチャブルで守られると、中にいる人はどんどんおごり高ぶり、自分たちは何しても許されるという幻想にとらわれます。
ところで毎回、企業の不祥事があると、会見で経営陣は立って頭を下げます↓

いつも思うのですが、本当に日本的な、歌舞伎や能の決まりきった所作のようです。
それで何か解決に向かうのならいいですが、たいていの場合何も変わらず問題はくすぶり続けます。空っぽな所作を止めたらいいのに、と思います。
トランプのように、政府や企業の癒着と、潜む利権の巣をバッサバッサと切り、憎まれながらもウミを出す・・・
そんな人は現れませんかねぇ。
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